不愉快マンガと云うジャンル分けが許されるなら、そこに属する唯一の漫画家、新井英樹の連載『RIN』が長期休載と、メジャーの週刊誌ヤングマガジンからドマイナー隔月誌別冊ヤングマガジンへの左遷を経て再会された。
アッパーズ休刊に伴って、『RIN』の前作にあたる『シュガー』が連載終了になってから、待ちに待った『RIN』第一話がいきなり世界タイトルマッチ獲得だったのにも驚いたものだ。プロ第二戦から世界タイトルマッチまでの盛り上げを一切拒絶した形で、リンというボクサーを完成した形で描いてしまう。そこでは、ボクサーの成長物語として読むことを一切拒絶しており、リンと周囲の軋轢と云うただただ不愉快さだけが醸し出されていた。その後何回か続いた連載でも、単純な感情移入を一切許さぬかのような、不協和音が淡々と紡ぎ出されてた。『ザ・ワールド・イズ・マイン』を始めて読んだ時から心酔し切ってしまった私のような新井信者にはそれでも愉しかったが、ボクシングマンガとしてこの作品を読んでいる人からすれば、この上なく不愉快なマンガであろうことは、明らかだった。それだけに、ヤングマガジン誌上での長期休載はとても残念なものではあったが、理解できないものではなかった。
それだけに、待ちに待った連載再開がとても嬉しかったのだが、これがまた、ねじれた展開を見せていて、相変わらずの不愉快さである。今まで徹底的にこき下ろしていた元ヤクザのボクサーの過去を、大半のページを割いて徹底的に描く。それは確かに『ザ・ワールド・イズ・マイン』を経た確かな迫力の残酷描写はあるものの、基本的な筋書きはそれこそVシネマのようなものだ。凡庸なものを凡庸に描いたものが連載第一話。これが新井英樹の才能の枯渇でないことは『シュガー』でのリンのプロ二戦目の描写の巧みさを見れば明らかなことであって、この不愉快さが更なる不愉快さの伏線であることは明らかだろう。新井作品を読んでいる人にとっては、そのことは明らかなのだが、しかし、普通の読者にとっては、これはちょっとした残酷でボクシングマンガとしては面白くないマンガ以上のものではないまま暫く進んでしまうのではないだろうか。というのが少し心配ではある。勿論、物語が転がり始めれば、感動と安易に呼ぶには抵抗を覚えるあの感覚、棍棒で殴られるような力強い衝撃を与えてくれるのだろうけれど。
もう打ち切りは勘弁して欲しい、というのが正直な所だ。
浴室で電動ノコギリを使って人をばらすと云う描写があったのだけれど、これがそのまんま『スカーフェイス』だったのでちょっと笑った。『ザ・ワールド・イズ・マイン』のタイトルも、『スカーフェイス』の中で印象的に出てくる「The World is Yours」のもじりだろうし、新井英樹はきっとこの映画が好きなんだろう。そういえば、トニー・モンタナの物真似が出来る友人は元気だろうか。
新井英樹から入ってトニー・モンタナに出る、狭い日記でありました。